ご本人とご家族へ|聞こえと、FILLTUNEの技術
年齢とともに、
聞こえも変わっていきます。
聞き返すことも、聞こえを補う道具を使うことも、会話を続けるための自然な選択です。
聞こえにくさは、年齢を重ねると多くの人が経験する、からだの変化の一つです。ご自身のペースで、ご家族と一緒に、会話を楽しむ方法を選んでいきましょう。
年齢と聞こえのデータを見る
声を受け取るマイクと、耳元に当てる本体。メーカー公開の使用写真。01 年齢とともに、身近になる変化
聞こえにくさを感じるのは、
あなただけではありません。
年齢を重ねると、耳の奥や音を伝える神経の働きにも変化が起こります。聞こえにくさを、ご自身の努力不足だと感じる必要はありません。変化の時期や程度には、一人ひとり違いがあります。
加齢による聞こえの変化(米国立研究機関 NIDCD)
国内の地域住民を対象にした研究
70代後半では、
約7割に。
男女ともに、軽度以上の難聴が認められています。
「聞こえにくい」は、年齢とともに身近になること。ご家族にも知っていただきたい事実です。
軽度以上の難聴が認められた割合
棒の長さはすべて0〜100%の同じ尺度です。
国立長寿医療研究センターのNILS-LSA第6次調査(2008〜2010年)。愛知県大府市・東浦町の住民を対象とした調査の解析対象2,194人のうち、65歳以上の年代別結果(算定A)を表示。聞こえのよい側の耳で、4つの高さの音の平均聴力レベルが25dBを超える場合を「難聴」とした研究です。2012年発表の地域研究で、現在の全国民の割合を直接示すものではありません。国立長寿医療研究センターの解説数値の出典:内田育恵ほか(2012年)聞き返しても、頼っても、大丈夫。もう一度聞きたいと伝えることも、文字や道具を使うことも、会話を続けるための自然な選択です。聞こえにくさがあっても、あなたの言葉や思いの大切さは変わりません。
ご家族と、今日からできること
話し方や場所を、一緒に整えていく。
聞き返しが増えたときは、今の聞こえに合わせて伝え方を変えてみましょう。ご本人にも、聞きやすい話し方や場所を尋ねてみてください。
- 顔が見える、静かな場所で
「テレビを消して、ここで話そうか。」
顔を向けて話すと、口の動きや表情も手がかりになります。
- 急がず、はっきりと
「もう一度、ゆっくり話すね。」
大声で叫ばず、聞きやすい声量と速さを確かめながら話します。
- 大切な用件は、文字でも
「日時も、ここに書いておくね。」
名前や予定、数字は、紙や画面でも見られるようにすると伝えやすくなります。
声かけは会話の例です。工夫の参考:NIDCD「家族や友人ができること」日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の解説
02 なぜ、声を大きくするだけでは難しいのか
声はするのに、言葉が分かりにくい。
その変化にも、理由があります。
会話の声には、「あ・い・う・え・お」の母音と、「か・さ・た」などを区別する子音が含まれています。子音の手がかりが聞き取りにくいと、声がしていることは分かっても、何と言ったのか判断しにくくなります。
メーカー資料の例を、文字で簡略化したものです。難聴の聞こえ方を再現するものではなく、実際の聞こえ方は一人ひとり異なります。加齢とともに、高い音を捉えにくくなることがあります。
耳の奥の「蝸牛(かぎゅう)」には、音の振動を神経の信号に変える有毛細胞があります。加齢による内耳などの変化は、高い音や言葉の聞き取りに影響します。子音を聞き分ける手がかりにも、高い周波数の成分が含まれます。
会話をもっと楽しめるように。FILLTUNEは、音量に加えて「言葉を区別する音の成分を、どう届けるか」に着目しました。
説明資料7〜8ページ、メーカー説明動画6:42〜8:14。加齢による聞こえの変化(NIDCD)
03 なぜ、従来の骨伝導だけでは解決しなかったのか
課題は、からだに触れた状態で
高い音まで伝えること。
骨伝導は、本体の振動を皮膚や骨を介して内耳に届ける方法です。しかし、骨伝導という音の通り道を選ぶだけで、言葉の聞き取りが改善するとは限りません。
骨伝導で音が届く流れ
- 本体の振動
- 皮膚・骨
- 内耳
骨伝導も内耳の働きを使います。感音性難聴では、音を感じる側にも課題があります。「振動している」と「振動を伝えられる」は、別の性能です。
音の信号を振動に変える部品を「振動子」といいます。からだに当てると、その動きには抵抗がかかります。必要なのは、この負荷がある状態でも振動を伝え、言葉の手がかりとなる高い音の成分を保つことです。
開発で突き当たった壁
試聴で残った、「音はするが、言葉が分からない」という声。
開発者の磯部純一は、2015年から携わった骨伝導製品の開発で、この課題に直面したと記しています。取り組みを続けても、聞き取りに満足してもらうことは容易ではありませんでした。
メーカーが重視したのは、従来の磁石を使う方式との比較で差が出た、高い音域の伝達力でした。そこで、振動のつくり方そのものを見直していきます。
開発者の寄稿を読む(2025年8月)振動の比較:説明資料11〜12ページ、FAQ11ページ。従来方式すべての性能を一律に示すものではありません。内耳で音を感じる仕組み(NIDCD)
04 なぜ、できるようになったのか
微細でも、耳の奥まで。
声を力強く届ける振動。
転機は、磁力によって金属そのものがごくわずかに伸び縮みする「超磁歪」という性質を使ったことです。駆動回路と超磁歪素子を使った振動子が、音声の電気信号を微細でも力強い振動に変え、皮膚や骨を介して耳の奥(内耳)へ届けます。
- 声を受け取るマイクの電気信号
- コイルの磁力を変える金属が伸び縮み
- 皮膚・骨を介して耳の奥へ届ける
音の信号に合わせて金属を伸縮させる仕組みの概略です。超微振動わずかな伸縮が、音を生む。
資料で示される素子の伸縮は最大7μm。1μmは1mmの1,000分の1です。
高出力耳の奥へ、力強く。
微細な伸縮でも、からだに当てたときの負荷に抗して振動を伝え、耳の奥にある内耳へ声を届けます。
広帯域・高速応答声の細かな変化まで。
高い音の成分や、声の素早い変化に応答できることを目指した設計です。
その材料を、製品の性能に変えるための設計。
材料の性質を引き出すには、振動を支える構造と、適切に動かす回路も必要です。これらを組み合わせた振動子が、FILLTUNE TDです。
メーカー説明資料12ページの構造図。実寸ではありません。- 材料伸縮する超磁歪素子
- コイルがつくる磁力の変化に合わせて伸び縮みし、音の振動を生み出します。
- 構造動きを支えるダンパーとリング
- 振動子を支える部分にも工夫を重ねています。説明資料では、ダンパーの硬さやリングの構造を、振動の出力を引き出す要素として示しています。
- 回路専用の駆動アンプ
- 音の信号を受けて振動子を動かす部分です。FAQでは、Hi-Fiオーディオのアンプ技術を基に、超磁歪素子に合わせた専用回路を使うと説明しています。
微細でも、耳の奥へ声を届ける。言葉の手がかりとなる高い音の成分まで伝えるために、材料・構造・駆動回路を一体で設計しています。
説明資料12・26ページ、FAQ12ページ、メーカー説明動画13:17〜14:14。数値・構造は資料に記載された技術の説明です。
05 実際の聞こえでは、どんな結果が出たのか
高度難聴の方にも、
聞こえの結果が報告されています。
振動を伝える技術が、実際の聞き取りにつながるか。人に使ってもらい、言葉の聞き取りを確かめる臨床テストも行われてきました。メーカーの説明資料には、高度難聴の方でも聞こえを得られた結果が紹介されています。
メーカーが紹介する、先行技術の臨床テスト
「確かな聴こえ」を届けられたと評価。
- 中・高度難聴を中心とした被験者
- 約8割
- 高度難聴の被験者加齢性難聴を含む
- 約6割
メーカー「a・tell 説明資料」2026年8月7日版・10ページに記載された、対象別の結果です。
確かめたのは、言葉の聞き取り。
高度難聴を中心とした被験者の「6割」という結果は、メーカーのGREEN FUNDING掲載資料でも紹介されています。同資料では、日本語100語音認知検査による、語音の聞き取り・書き取りテストの結果と説明しています。
メーカーによる試験結果と評価方法の紹介a・tellに採用された技術の先行機器での試験を、メーカーが紹介した数値です。現行a・tellを使うすべての方の改善率を示すものではありません。聞こえ方には個人差があります。
公開されている開発報告でも
高度・重度感音性難聴で、
聞こえの改善を報告。
厚生労働省に掲載された2013年度開発事業概要には、先行機器「プレスティン®きのこ」を使い、5か月・40症例のモニターを行った記録があります。その分析結果で、高度・重度感音性難聴は「良好(補聴の改善が見られた)」と報告されています。40症例はモニター全体の数です。
開発事業の報告を読む(厚生労働省・PDF)一方、メーカー説明資料(2026年8月7日版・10ページ)の評価表では、重度難聴(91dB以上)に「効果なし」との記載があります。対象や試験条件の違いは確認できていません。いずれも先行機器に関する資料で、現行a・tellへの行政の効果保証・医療機器としての承認とは異なります。
現行a・tellのFAQ(2026年7月28日版・12ページ)は、利用の目安を「高度難聴の80dB程度まで」としています。重度難聴のすべての方への効果を示すものではありません。
聞こえを支える、振動の性能も検証
高い音を伝える力を、測定で確かめる。
メーカーの比較測定
板の離れた位置に、どれだけ振動が届くか。
ステンレス板を骨に見立て、振動子から離れた位置の振動を測ります。メーカー資料では、子音の手がかりを含む2〜8kHzの帯域で、比較対象の磁石式振動子より大きな振動量を報告しています。
20〜40dBの差資料中の振動量の比較では10〜100倍
この数値は、資料に示された条件での板上の測定結果です。聞こえる音量や、言葉の聞き取りやすさが10〜100倍になるという意味ではありません。
説明資料11ページ・FAQ11ページの測定図。基礎研究|2006年
高い周波数の振動を比較。
ラットを対象としたSakaiらの研究では、超磁歪式と電磁式の振動子を比較。1V p-pの入力で、2〜30kHzでは超磁歪式、0.5〜1kHzでは電磁式の頭骨振動速度が高い結果でした。
研究用振動子とラットでの結果です。市販a・tellの会話の改善率を示す試験ではありません。
論文の概要(PubMed)試験結果を読むときに知っておきたいこと対象・評価方法・機器について
上の約8割・約6割は、メーカー説明資料10ページの対象区分に沿って掲載しています。対象者の内訳や試験条件の全容は、この資料だけでは確認できないため、2つの数値を同じ集団での比較や、全員への効果保証には使っていません。
また、振動の測定結果だけで「損傷した聴覚細胞を周囲の細胞が補う」という仕組みまで確定することはできません。音を伝える技術と、ご本人の聞き取りは、分けて確かめる必要があります。
06 聞き取りの技術を、日々使える道具にするまで
大きく重い装置から、
耳元に当てる道具へ。
良い振動をつくれても、大きさや重さが残れば、会話のたびに気軽には使えません。小型化、装着の工夫、無線化。実用化には、もう一段の開発が必要でした。
小型化・高性能化
超磁歪との出合いから、
約2年の研究開発。
2019年にこの技術と出合った開発者が目にしたのは、大きく重い振動子でした。そこから小型化と高性能化に取り組み、FILLTUNE TD ver.1が完成。2022年4月、ヘッドホン型のFILLTUNE CLEARを量産製品として届けるに至ります。
メーカー説明資料に示された振動子の開発の歩み。開発者による小型化の経緯当時の開発紹介(GREEN FUNDING)
使う人の声が、次の形を決めました。
1 ヘッドホン型FILLTUNE CLEAR
装着して会話や音楽を楽しむ形に。頭部や耳元へのフィット、声を拾うマイクの設計も、試聴の声を受けて改善しました。
現場からの声診察ではずれてしまう。聴診器のように、必要なときに使いたい。
2 手持ち型の試作必要なときに、耳元へ。
頭に装着する形から、相手の耳元に当てる形へ。診察や訪問先で使ってもらい、試作品の改良を重ねました。
現場からの声訪問診療では、つながっているコードが危ない。
3 無線式のa・tellへ話す人と聞く人の間を、自由に。
マイクと本体を無線で接続する形へ。話す人がマイクを持ち、聞く人は本体を耳元に当てて使います。
日々の扱いやすさも充電台から取り出すと自動で起動。マイクと本体の接続も自動です。
説明資料5ページ、FAQ3ページ、メーカー説明動画3:10〜4:03。製品写真・試作品写真はメーカー説明資料より。FILLTUNE CLEARの装着・マイク設計は当時のGREEN FUNDING掲載内容を参照。
聞く人に届くこと。話す人が無理なく使えること。その両方を、現場の声から磨いてきた製品です。
メーカーの説明を、動画でも
知りたい場面から、ご覧いただけます。
メーカーの詳しい説明動画(15分版・2025年6月更新)。下の項目を選ぶと、その場面から再生します。
知りたい項目を選んで再生
動画内の測定値・試験結果については、上の「聞こえの結果」で、対象と意味を補足しています。
次は、いつもの会話で
ご本人が、話したいことから。
いつもの会話で試してみる。
使ってみたいと思ったら、普段話す方と一緒にお試しください。聞こえ方には個人差があります。ご本人の「聞きやすい」「使いやすい」という感じ方を、いちばんの手がかりにしましょう。
- 1
話す人がマイクを持ち、聞く人が本体を耳元に。
マイクを口元へ向け、本体は耳穴の前付近に軽く当てて、位置を調整します。
- 2
話したいことを、いつもの声で。
好きな話題や今日の出来事で、言葉の聞き取りやすさを確かめます。ご家族は答えを急かさず、ご本人のペースを大切にしてください。
- 3
持ちやすさと、使い心地も。
聞きづらさや扱いにくさがあれば、そのままお伝えください。ご本人が無理なく使えるかを、一緒に確かめましょう。
ご家庭の会話にも、窓口や施設での対話にも。
使いたい場面から、製品選びや試聴をご相談いただけます。
製品選び・試聴を相談するa・tellとFILLTUNE CLEARは、日常の音を聴きやすくする音響機器です。医療機器(補聴器)ではありません。
使い方のFAQ
当て方・接続・お手入れについて。
a・tellを使う前に知っておきたいこと。
補聴器とはどう違いますか?
a・tellとFILLTUNE CLEARは、日常の音を聴きやすくする音響機器で、医療機器(補聴器)ではありません。a・tellは、使う方ごとの事前の音の調整をせずに試せますが、聞こえ方には個人差があります。
本体は、どこに当てますか?
耳穴の前にある小さな出っ張り(耳珠)の付近へ、本体を軽く当てます。位置を少しずつ動かし、聞きやすい場所を確かめてください。詳しい当て方は、付属の取扱説明書でご確認ください。
声が小さいときは、どう調整しますか?
本体を当てる位置を調整し、マイクの表側を口元に向けます。マイクは口元から8〜16cm程度が目安です。それでも小さい場合は、本体のブーストボタンを押している間、音量を上げられます。
使い始めるときに、接続の設定は必要ですか?
a・tellの付属マイクと本体は、電源を入れると自動で接続します。接続ランプが点滅から点灯に変わったことを確認してください。a・tell LIFEやFILLTUNE CLEARの接続方法は、それぞれの製品案内をご確認ください。
同じ場所で複数台を使えますか?
1組目の本体とマイクを先に起動し、接続ランプの点灯を確認してから次の組を起動します。同時に起動すると、意図した組み合わせと異なる本体・マイクが接続する場合があります。
音が途切れるときに、確認することは?
本体とマイクの距離、間に壁や家具がないか、充電残量を確認します。通信距離の目安は最大10mですが、使う環境によって変わります。電子レンジやほかの無線機器の影響を受ける場合は、使う位置を変えて確かめてください。
共有するときの、お手入れ方法は?
汚れは、固く絞った柔らかい布などで拭き取ります。充電台には、本体の肌に触れる面へ紫外線(UV-C)を約1分間当てる機能があります。お手入れに使えるものや手順は、取扱説明書をご確認ください。施設で使う場合は、施設のお手入れ手順にも従ってください。
試さずに、自分に合うか分かりますか?
測定の数値だけでは、ご本人の聞こえ方は判断できません。ご家族や一緒に使う方と、実際に使う場所で会話を試すことをおすすめします。言葉の聞き取りやすさと、持ちやすさを確かめてください。
出典・参照資料
製品の仕様・操作方法は、最新の取扱説明書とメーカーの案内をご確認ください。